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  • 保育業界 知っておきたい基礎知識 (3)なかなか解消に至らない待機児童問題
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(1)「新待機児童ゼロ作戦」が現在進行中
(2)「新保育所保育指針」の適用スタート
(3)なかなか解消に至らない待機児童問題
(4)保育園の規制緩和
(5)幼保一元化とは
(6)少子化と保育園

なかなか解消に至らない待機児童問題
希望しても認可保育所に入れない待機児童の問題は、少子化対策の一環として就学前児童の保育環境が取りざたされた2001年から国が力を入れてきた課題です。しかし、なかなか解消できていないのが現状のようです。

 
潜在待機児童は全国で85万人

 衝撃的なアンケート結果が厚生労働省から発表されています。同省が2008年8月、全国103自治体の就学前児童がいる世帯にアンケートを実施した(回答数約12万2600世帯)ところ、0〜2歳の子どもがいる家庭で、現在は認可保育所を利用していないが、「1年以内に働き始め、子どもを認可保育所に預けたい」などと考えている世帯が約2割ありました。
 この結果をもとに現在の児童数から潜在的ニーズを推計すると、0〜2歳の認可保育所の利用希望人数は約59万人、同様に3〜6歳の利用希望人数は約26万人と合計で約85万人にもなると言います。
 そして、最近の急激な景気の悪化で、子どもを保育所に預けて働きに出ることを希望する母親が急増し、2008年4月から10月の半年間に待機児童の数は、2万人弱から4万人へと倍増してしまいました。

2010年から「保育ママ」の制度化へ
 2008年の児童福祉法の改正により、2010年度からは「保育ママ」が法制化されることになりました。保育所に入所できない、主に3歳未満の児童を保育者の居宅で保育する「保育ママ」は待機児童の受け皿としての重要性が高まりつつあります。
 「保育ママ」のルーツは、1950年、京都市が始めた「昼間里親制度」にあると言われています。その後、1965年に川崎市でも「家庭保育福祉制度」が発足し、全国の自治体に徐々に広がるようになりました。
 国が子育て支援の一環としてこのシステムに目をつけ、「家庭的保育事業」として補助金を支給するようになったのは2000年度のことです。ただ、保育者が保育士または看護師の資格を持っていることが要件で、対象も3歳未満であったために、2007年度の段階でも活用していたのは全国で12市町村に限られていました。
 しかし、法制化に先立ち、現在の補助事業でも、対象年齢をこれまでの3歳未満から就学前に拡充するとともに、保育者自身に就学前の子がいても認めるなどの要件の緩和が決定されました。また、新しい制度のもとでは、保育士や看護師、幼稚園教諭のほか、市町村が研修などで認定した人も保育ママとし、必要な基礎研修の内容も示されることになりました。
 

 厚生労働省では、以前に紹介したとおり2008年2月より「新待機児童ゼロ作戦」を展開中です。他にも都市部の保育所拡充に向けて、一つの保育所を中心に複数の小さな保育所(分園)を運営する事業主への支援で、これまでの定員要件(20人以上)を年内に撤廃するなど、さまざまな方針打ち出していますが、作戦の実効性が上がるのが待たれるところです。