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  • 保育業界 知っておきたい基礎知識 (2)「新保育所保育指針」の適用スタート
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(1)「新待機児童ゼロ作戦」が現在進行中
(2)「新保育所保育指針」の適用スタート
(3)なかなか解消に至らない待機児童問題
(4)保育園の規制緩和
(5)幼保一元化とは
(6)少子化と保育園

「新保育所保育指針」の適用スタート
2008年3月28日に舛添厚生労働大臣により告示されていた新しい「保育所保育指針」、今年4月1日からいよいよ適用が開始されました。この新指針は、2006年12月に改定に関する検討会がスタートして以来、ワーキンググループの作業と検討会主査の会議を除き、基本的に公開のもとに行われてきたものです。告示化された保育指針の内容が、広く保育現場に浸透し、その趣旨が理解されるよう、厚生労働省から「保育所保育指針解説書」も出されています。

 
努力目標の通達から規範性のある大臣告示に

 まず解説書で、今回の改定の背景として挙げられているのは、旧保育所保育指針の施行から8年が経過し、その間、家庭や地域において人や自然と関わる経験が少なくなったり、子どもにふさわしい生活時間や生活リズムがつくれないことなど子どもの生活が変化していることや不安や悩みを抱える保護者が増加し、養育力が低下していること等です。そして、「子どもの育ちや保護者をめぐる環境が変化し、保育所への期待が高まり、質の高い保育が求められる中で、保育所の役割・機能を再確認し、保育の内容の改善充実を図ることが重要になってきている」としています。
 新指針の大きな特徴としては、それまでの指針が局長通達であったのに対し、今回は規範性を伴う大臣告示となったことです。これにより、指針は「最低基準」としての性格が明確になりました。また、保育の実施は保育所の自主性、創意工夫が尊重されるという基本的原則をより明確にするために、内容の大綱化が図られました。

社会的な期待の高まりに応えられる保育所へ
 指針の具体的な内容としては、一つが「保育所の役割の明確化」を図ったことです。保育所は、養護と教育を一体的に行うことを特性とし、環境を通して子どもの保育を総合的に実施する役割を担うとともに、保護者に対する支援を行うことを明記しています。
 二つ目が「保育内容の改善」です。旧指針では、6か月未満児から6歳児までの8つの発達過程区分ごとに示されていたのに対し、新指針では内容の大綱化を図る観点からどの発達過程区分にも共通する基本的な事項を提示。その上で、乳児、3歳未満児、3歳以上児など発達過程に応じた特有の配慮事項を併記しています。また、養護と教育の一体的な実施や健康・安全のための体制充実、就学に際し、子どもの育ちを支えるための資料を「保育所児童保育要録」として小学校へ送付することを義務づけています。
 三つ目が「保護者に対する支援」です。保育所が「家庭や地域の様々な社会資源との連携を図りながら、保育所に入所する子どもの保護者や地域の子育て家庭を積極的に支援するという役割を果たしていくべき」との観点から、保育士の業務として明記するとともに、独立した章を設け、保育所に入所する子どもの保護者に対する支援及び地域における子育て支援について定めています。
 そして四つ目が「保育の質を高める仕組み」です。これまでの保育が、保育士等の技量や持ち味によって行われてきた傾向が強かったことに対する反省から、「保育課程」の編成により保育所全体で組織的及び計画的に保育に取り組むことや、それぞれの指導計画や食育の計画などを作成することが規定されました。また、体系的・計画的な研修や職員の自己研鑽等を通じて、職員の資質向上および職員全体の専門性の向上を図ることも求められています。

 

全国の園長先生に「就職前に読んでおいてほしい本はありますか」とアンケートをとったところ、「保育所保育指針」と回答された園長先生が多数いらっしゃいました。現在では様々な解説本も出版されていますので、保育園に就職を希望される方は、一度目を通しておいてもよいかもしれませんね。実際に、現在保育園で働いている職員さんたちも、保育園の内外で指針改定にともなう研修会や勉強会を行っているようです。